呼吸器疾患
当院で診療する主な呼吸器疾患は、風邪、新型コロナウイルス感染症 インフルエンザ感染症、肺炎、気管支炎、などの急性感染症(軽症者に限ります)や、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などです。肺結核、非結核性抗酸菌症、肺がん、間質性肺炎などは現在診療しておりません。また症状が重いと判断した方や既にかかりつけ医療機関のあるご高齢の方については高次医療機関での診療をお勧めすることがあります。
呼吸器科疾患によくある症状
- 風邪をひいた(のどが痛い。鼻水が出る。咳が出る。)
- 咳が止まらない
- 呼吸がしづらい。ゼイゼイヒューヒューといった呼吸音がする
- 息切れを感じる。動くとすぐに息があがる など
呼吸機能検査~肺年齢測定~
当院では「スパイロメーター」という、お身体の負担が少ない呼吸機能検査を行っております。機器に繋がったマウスピースをくわえていただき、これに向けて息を吐いたり、吸ったりしていただくことで、短時間で肺活量や呼吸の勢いを計測し、肺の機能を評価できます。
気管支喘息、肺気腫などの慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)の診断に有用です。また、正常値との比較を行い、肺年齢を算出することができます。
呼吸器でよくある病気
風邪(感冒、急性上気道炎)
ウイルスという微生物が上気道(のどや鼻の粘膜)に感染し炎症が起きた状態を指します。典型的には、発熱、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、咳、痰などの症状が現れます。治療は対症療法(症状をやわらげながら、病状の改善を待つ)が中心で、細菌感染症に対して用いられる抗生物質は一般的には無効です。予防が大切で、栄養と睡眠をしっかりとることや、外出後などにうがい・手洗いをすることが勧められます。
急性気管支炎、肺炎
急性気管支炎、肺炎とは、気道(肺までの空気の通り道)や肺の中に入った微生物(細菌であることが多い)によって炎症を起こした状態を指します。健康な方は体内で病原菌を排除できますが、高齢の方や免疫力が弱まった方は病原菌が肺まで到達してしまいます。風邪の症状の後に発症する方が多く、風邪をひいてから3〜4日たって再び発熱を繰り返すようになり、食欲不振や全身倦怠感も目立ってくることが多いです。発熱も風邪よりも顕著で、しばしば寒気を伴い、39℃台までに至ることも多いです。咳、発熱、胸痛、呼吸困難感などの症状を伴い、特に痰が増えるとともに痰の色(黄色、緑色、茶色など)や粘調度(粘りけ)にも変化が見られてくることが多いです。胸部レントゲン検査、血液検査、痰の細菌培養検査などで診断します。治療は、病原菌の種類に合わせた抗生物質の投与を行います。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは、たばこの煙などの有害物質を長期間吸入したことによって、空気の通り道である気道(気管支)や、酸素の交換を行う肺(肺胞)などに炎症が生じて呼吸がしにくくなる病気です。
長年にわたる喫煙習慣が主な原因で、患者さんの90%以上は喫煙者となっていますが、本人が吸わなくても家族にタバコを吸う方がいる場合、副流煙による「受動喫煙」でこの病気になる人も少なくありません。これは副流煙には喫煙者が吸う主流煙よりも発がん物質をはじめとする有害物質が多く含まれているためです。大気汚染もCOPDの原因となります。
有害物質が細い気管支に炎症を起こし(細気管支炎)、咳や痰が多くなります。その結果、気管支の内側が狭くなり、空気の流れが悪くなります。また、有害物質が肺胞(肺の中でガス交換を行う半球状の小さな袋状の小腔)にまで及んで炎症を起こすと、肺胞の壁が破壊され、肺の弾力がなくなり(肺気腫)、吸い込んだ空気をうまく吐き出せなくなり、肺の中にガス交換が済んだ空気が残るようになり、新鮮な空気が入りにくくなります。
症状は風邪でもないのにしつこい咳や痰が続き、階段を登る、速く歩くなどの動作で息切れを感じます。進行すると、食事や着替えの動作でも息苦しくなります。また、慢性的に酸素不足の状態となり血液の色に変化が生じるために、唇や爪が紫色(チアノーゼ)になります。COPDの患者さんは風邪やインフルエンザなどの呼吸器の感染症をきっかけに、呼吸困難などの症状が悪化し、生命に危険が及ぶ状態(COPDの増悪と呼びます)となり、入院治療が必要となることも多くなります。また、COPDは肺ばかりでなく、虚血性心疾患や骨粗鬆症、糖尿病など全身にさまざまな病気を引き起こします。同じ量のたばこを吸っていても、COPDの人はそうでない人に比べ、約10 倍肺がんになりやすいといわれています。
治療は禁煙が最も重要です。喫煙を続ける限り病状は進行し続けますが、禁煙することで病状の進行速度は顕著に低下します。気道の閉塞が軽度のうちに禁煙できれば、咳や痰の症状は改善され、息切れの悪化も遅らせることができます。息切れの症状がある方は、気管支拡張薬を使用して気道を広げると空気の通りがよくなり、呼吸困難が軽減されます。また、気管支拡張薬などを用いて症状を軽減しつつ、ムリのない範囲で体を動かして体力をつけることが大切です。病状が進行して呼吸不全になると酸素不足の状態(低酸素血症)となり、酸素吸入が必要になりますが、小型の酸素吸入の装置をご自宅に設置する在宅酸素療法で通院での治療が可能です。外出時には携帯型の酸素吸入装置を使用していただきます。
独立行政法人 環境再生保全機構ホームページを参考に作成
気管支喘息
気管支喘息はアレルギーなどによる気管支(空気の通り道)の炎症が慢性化し、気道が狭くなる発作を繰り返します。発作は夜間に起こることが多く、発作時の症状は咳、痰、呼吸困難感、喘鳴(ゼイゼイヒューヒューといった呼吸音を伴う)などで、低酸素血症、呼吸不全にまで至ることもあります。発作時にのみ治療するのではなく、継続的な治療によって発作を予防することが非常に大切です。発作を繰り返すことが積み重なって年月が経つことで実際の年齢より呼吸機能の低下が速くなるといわれております。治療は吸入ステロイド剤や気管支拡張剤、抗アレルギー剤などが用いられます。
慢性咳嗽(咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群など)
長期間咳が続くために受診する患者さんでは咳喘息と呼ばれる疾患が増加しております。喘鳴や呼吸困難感などの気管支喘息で見られる症状がはっきり現れず、咳のみが続くことが多く、多くの患者さんが「風邪の後咳が止まりません」と訴えて受診されます。
ほとんどの患者さんはまず、のどの痛み、鼻水など風邪の症状とともに咳が出現し、その後咳のみが続く状態となり、近くの医院などでコデイン含有の鎮咳剤などを処方されたが効果が乏しく、「夜間も咳が出て辛い」などと訴えて受診されることが多いです。
発症のメカニズムは気管支喘息に近いため、抗生物質や鎮咳剤などの効果は乏しく、気管支喘息に準じた治療が奏功し1週間から3ヶ月で治癒します。
その他、長期間続く咳の原因としては、気道(空気の通り道)のアレルギーの一つであるアトピー咳嗽(「気道の蕁麻疹」と例えて説明すると分かり易いでしょうか)や副鼻腔炎(いわゆるちくのう症)が原因である副鼻腔気管支症候群などの気道の疾患の他、一見関連無さそうな消化器疾患である逆流性食道炎が原因となっていることもあります。
これらの疾患は検査を重ねても鑑別診断が難しいことも多いですが、当院では出来るだけ速やかに症状を取り除けるように心懸けて診療しております。